2021年06月21日

猪名の里の花々34.ドクダミ〜毒草ではありません〜

 ドクダミ科ドクダミ属の多年草です。薬草としての効能が多いことから、ジュウヤク(十薬、重薬)とも呼ばれています。古くから、民間薬として広く知られています。湿った日陰に群生し、全草にアルデヒド系の独特の臭気を持ちます。ドクダミの名称は、民間薬として毒下しの薬効が顕著であるので、毒を抑えることを意味する「毒を矯(た)める」から、「毒矯め(ドクダメ)」が転訛して「毒矯み(ドクダミ)」と呼ばれるようになったというのが通説です。
どく1.jpg  どく2.jpg
 開花期は初夏から夏にかけて茎上部の葉腋から花茎を出して、頂には十字状に4枚の白色の総苞(総苞片:花弁に見える部分)を開き、その中央につく穂のような円柱状の花序(花穂)に、微細な淡黄色の花を密生させます。本来の花には花弁も萼もなく雌しべと雄しべのみからなり、1つの花には、先が3裂した雌しべが1個と3〜8個の雄しべがあります。実はできず、花弁のように見える白い総包は、何のために美しく見せているのか理由はよくわかっていません。繁殖力が高く、ちぎれた地下茎からでも繁殖するため、放置すると一面ドクダミだらけになり、他の雑草が生えなくなる。強い臭気があることと、地下茎を伸ばしてはびこるため、難防除雑草です。[2021年6月14日。猪名川自然林で撮影]
posted by もりぞー at 09:41| Comment(0) | 猪名の里の花々

2021年05月13日

猪名の里の花々33.テイカカズラ〜扇風機の羽のような花びら〜

 キョウチクトウ科テイカカズラ属のつる性常緑低木で、有毒植物です。木が若いうちは地上を這うように生育するが、隙を見て適当な木や岩を見付け、「付着根」を使って上方に伸びるという性質があります。5〜6月に咲く花は直径3センチほどで強い香りがあり、扇風機の羽根のように少し捻じれて咲くのが特徴です。かつてはこの香りを楽しむために庭などに植えられることが多くありました。10月頃に成熟する実は袋状で、長さは20cmほどになります。
DSCN1434b.jpg  RIMG0001.JPG
 和名は、式子内親王を愛した藤原定家(ふじわら ていか)が、死後も彼女を忘れられず、ついに定家葛に生まれ変わって彼女の墓にからみついたという伝説(能『定家』)に基づくとされていますが、テイカは「定家」ではなく「庭下」であり、庭の下の方に咲く葛の花を意味するという説の方が有力視されています。 [2021年4月30日。猪名川自然林で撮影]
posted by もりぞー at 09:34| Comment(0) | 猪名の里の花々

2021年04月30日

猪名の里の花々32.ハラン〜花は地面すれすれに顔を出します〜

 キジカクシ科ハラン属の常緑多年草です。茎は地下を横に這う地下茎の形をとり、葉は薄いが硬くてつやがあり、深緑色です。楕円形で長さが50cmを越え密な群落を作るので、地面から大柄な葉が立ち並ぶような風景となる。日陰で手入れをしないでもよく育ちます。花は紫色で多肉質で、4〜5ごろ地下茎から出て地面すれすれに咲きます。ちょうど花が地面にめり込んだような格好で、果実も地表に乗った姿になります。
ハラン1.jpg  ハラン2.jpg
 和食での料理の盛りつけで料理の飾りにハランの葉を包丁で細工したものを使うこともあります。現在では高級料亭、寿司店で使われています。現在、折詰や刺身に付いてくる「緑色のプラスチックシート(人造バラン)」は、このハランの葉の飾りつけを模したものです。これは、ハランを真似て作ったプラスチック製のものを人造ハランと呼んだのが起源です。前に「人造」が付くため「ハラン」が連濁して人造「バラン」となり、「人造」が取れて短縮された結果、「バラン」とよばれるようになりました。 [2021年3月29日。猪名川公園で撮影]
posted by もりぞー at 09:00| Comment(0) | 猪名の里の花々

2020年07月08日

猪名の里の花々31.ヨウシュヤマゴボウ〜ゴボウのような太い根〜

 ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草です。北アメリカ原産の帰化植物で、紅紫色の茎は2mほどになり、初夏から秋にかけて総状花序を作り、紅紫色の果実をつけます。在来種のヤマゴボウはヨウシュヤマゴボウより小ぶりで、茎は緑色です。根が太くて地中深くまではいっていてゴボウに似ていることがヤマゴボウの名の由来と言われています。ヨウシュヤマゴボウの「ヨウシュ」は西洋の種の意味なのです。根にはサポニンなどが含まれるため食べると下痢や嘔吐などの中毒を起こします。
DSCN0762.JPG  ヨウシュヤマゴボウ.JPG
 アザミの根がヤマゴボウという名で売られているため、ヨウシュヤマゴボウの根が食べられるものと勘違いして食べてしまい、中毒になるという事例がときどき起きています。しかし、実には有毒成分はほとんど含まれません。これは鳥に実を食べてもらうことで、種子の散布をしてもらう、この植物の生存戦略なのでしょう。 [花:2020年6月9日。実:2007年11月18日。猪名川自然林で撮影]
posted by もりぞー at 09:18| Comment(0) | 猪名の里の花々

2020年06月12日

猪名の里の花々30.センダン〜実を食べると食中毒をおこす〜

 センダン科センダン属の落葉高木です。世界の温帯に広く分布し、家具材として有名なマホガニーの仲間です。日本では伊豆半島以西の本州、四国、九州、沖縄に分布しますが、古くから暖地の各所に街路樹や庭木として植えられているので、天然分布区域は不明瞭です。成長が速く、ふつう高さ5〜10mですが、大きいものは高さ20m、直径80cmに達するものもあります。
DSCN0643.JPG  センダン2.JPG
 5〜6月に淡紫色の花を多数つけ、果実は10月頃黄色に熟しますが落葉後も木に長く残ります。果実の核は長楕円形で5〜6室からなり、各室に1個の種子がはいっています。種子でジュズを作っていました。「せんだんは双葉より芳し」という有名な言葉がありますが、これは白檀(ビャクダン)の中国名「栴檀」を「せんだん」と読んだもので、ここでいうセンダンとは異なります。センダンには白檀ほどの香りはありません。サポニンを多く含んでいるため、牛、羊、山羊、豚、犬、家禽と、ほとんどの家畜に中毒例があり、ヒトも食中毒をおこし量が多いと死亡することもあります。葉は肥料、殺虫剤や虫下しに用いられてきました。 [花:2020年5月19日。実:2011年11月1日。猪名川自然林で撮影]
posted by もりぞー at 08:59| Comment(0) | 猪名の里の花々

2020年06月03日

猪名の里の花々29.ヒルザキツキミソウ〜月見草なのに昼間に開花〜

 アカバナ科マツヨイグサ属の多年草です。北アメリカ原産で、大正末期ごろ観賞用として輸入・栽培されていたものが野生化し、中部地方以西で自生しています。宵に咲くツキミソウと違って、昼間に開花していることからこの名がついています。
DSCN0609.JPG  DSCN0611.JPG
 草丈は30〜60cmくらいで、白色または淡紅色で直径約5cmの花を5〜7月に咲かせます。つぼみのときは下を向いているが、開くと上を向きます。花弁は4枚で、広倒卵形で基部は黄色を帯びています。雌しべの先端は十字型に裂けており、雄しべは8本です。花が白色のものも、しぼむと淡紅色になります。果実は日本では結実しません。  [2020年5月14日。猪名川堤防で撮影]
posted by もりぞー at 09:20| Comment(0) | 猪名の里の花々

2020年05月16日

猪名の里の花々28.ユウゲショウ〜夕方に化粧したような美しい花を咲かせる〜

 アカバナ科マツヨイグサ属の多年草です。南アメリカ原産で、明治時代に観賞用として移入されたものが野生化し、日本各地の道端や空き地になどに広く分布しています。5月から9月にかけて、茎上部の葉の脇から薄紅色で直径1〜 1.5cmの花をつけます。花びらは4枚で紅色の脈があり、中心部は黄緑色です。やや紅を帯びた白色の葯を付ける雄しべが8本あり、雌しべの先端は紅色で4裂しています。 熟した果実は雨に濡れると開き、種子が飛び散ります。
DSCN0577.JPG  DSCN0579.JPG
 名前の由来は夕方頃に花を開き、白地に赤い化粧をしたような美しい花を咲かせることから「ユウゲショウ(夕化粧)」と呼ばれます。しかし、実際はほとんどが昼間から花を開いています。アカバナユウゲショウ(赤花夕化粧)とも呼ばれています。 [花:2020年5月4日。猪名川河川敷で撮影]
posted by もりぞー at 09:25| Comment(0) | 猪名の里の花々

2020年05月08日

猪名の里の花々27.ハナミズキ〜アメリカヤマボウシ〜

 ミズキ科ミズキ属の落葉高木です。北アメリカ原産で、日本における植栽は1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄がアメリカのワシントンにサクラを送った返礼として1915年に送られてきたのが始まりです。別名をアメリカヤマボウシと呼ばれていますが、アメリカ原産で日本の近縁種のヤマボウシに似ていることから名づけられました。現在では街路樹や庭木として多く植えられています。アメリカではハナミズキの樹皮を煎じて犬のノミ退治に使ったことから、英語名ではドッグウッドと呼ばれています。
DSCN0549.JPG  DSCN0548.JPG
 ハナミズキの4枚の大きな花びらは、花弁ではなく総苞(そうほう)です。総苞とは、小さな花の集まり全体を包んで保護している葉です。花のつぼみを保護しているがくと同じ働きをしています。ハナミズキの花は、総苞の中央部にたくさん集まった黄緑色をした部分です。小さいですが、1つずつの花には花弁4枚、雄しべ4本、雌しべ1本があります。秋には赤い実をつけ、葉も紅葉して美しいです。[花:2020年4月21日。田能通りで撮影]
posted by もりぞー at 09:28| Comment(0) | 猪名の里の花々